プライド・トルーパーズの本部を視察に来たベルモッドとマルカリータは、トレーニングルームに立ち寄った。
そこでは研修生たちが各々の能力を高めるために訓練をしていた。
「あ! ベルモッド様! マルカリータ様!」
顔をほころばせたユメが駆け寄ってきて、ベルモッドの手を取り左右に揺らした。
「お久しぶりですね!」
「ようユメ。元気そうじゃん?」
「変わりないご様子で、何よりですますよ」
会えなくて寂しかったですよー、と目を細めるユメの表情に、ベルモッドは日頃の疲れがじんわりと溶かされていくのを感じた。
「いろいろと野暮用があったもんでな。遅くなってすまなかった」
「でもその間に、わたしも少しは強くなれましたよ」
見ていてください、とトレーニング器具のほうに歩いていったユメは、手のひらから出したエネルギーの紐を束ね、100キロ超えのバーベルを軽々と持ち上げてみせた。
次に、間隔を空けて配置された数本の空き瓶に素早く紐を飛ばすと、細い飲み口を下にして置いた。それも、すべて同時に。
「どうですか?」
再び駆け寄ってきたユメは芸をした褒められ待ちの犬のようで、尻尾をブンブンと振る様子が見えるようだった。
「パワーと技巧、その両方が成長したようですます」
「いい感じじゃないか」ベルモッドはユメの頭を撫でた。「クンシーに指導してもらったのか?」
「そうですよ。もっと褒めてくださーい」
「よしよし。偉いぞ。ユメ」
軽くハグをして背中を叩いてやれば、子どものようにころころ笑った。
「ふたりを見ていると、まるで兄妹のようですます」
「そうですか? じゃあわたし、もう少しだけ訓練してきますね!」
「頑張れよ」
背中を見送ったベルモッドは、兄妹か、と小さく呟いた。
「妹というよりは、ひとりの女性として意識しているんだがな……」
「まあ……。そういうことですます?」
今以上の関係を望む気持ちはあるが、まあ、そう焦ることもない。ベルモッドは口元を緩めた。
徐行