シャンパはヴァドスを伴ってフードコートでちゃんぽんを食べていた。
「わぁー! おっきい猫さんだー!」
 声のしたほうを向くとランドセルを背負った少女がいた。
「なんだぁ? おまえ、迷子か?」
「ううん、学校の帰りだよ。おつかいの途中」
「ひとりで大丈夫なのかよ? 平和な星だな」
「その子の鞄に付いているのは、いわゆる防犯ブザーというものですね」
 ヴァドスの指摘に少女は体ごと防犯ブザーを揺らす。
「そう。変な人に会ったら鳴らすんだぁ」
「で、なんか用かよ?」
「そのお腹、触ってもいいですか?」
「ダメに決まってんだろ! おまえごときが気安く触っていいもんじゃねーんだよ!」
 少女は口を引き結んで切なそうな目をした。
 何か悪いことをしたような気分になってくる。シャンパはため息をついた。
「何か、この星のうまいもんを教えろ。それで手を打ってやる」
「うーんとね」少女は首を傾げた。「この場所なら、たこ焼きと海鮮丼とスイートポテトがおすすめかな」
「ほぉ。あとで食いに行ってみるか」
「これ以上食べるとカロリーオーバーですよ。シャンパ様」
「せっかく来たんだ。そのぶん明日控えればいいだろ?」
 ヴァドスから視線を戻せば、少女は目を輝かせて待っている。
「いいぜ、触れよ」
 そう言うなり、そろそろと近づいた片手が腹を撫で、すぐにもう一方の手も加わって肉を揉まれた。
「わあ! もちもちーふわふわーぽよぽよー!」
「おい、そのへんにしとけ! ここはマッサージ店じゃねえんだぞ」
 素直に手を引っ込めた少女は一礼した。
「ありがとうございました。シャンパ様!」
 それでは、と微笑む顔は満足げな雰囲気に満ちていた。
「おう。じゃあな」
「まんざらでもないご様子でしたね」
「んなわけあるか。ガキは趣味じゃねえ」
 シャンパはどんぶりを持ち上げてスープを飲んだ。

神の取引