受付に立っていたロウドフが詰め所にやってきた。何やら意味深な笑みを浮かべて、声高に伝える。
「カンシュコフ、お前に客だぜ」
「カンシュコフー! 会いたかっ――」
「コニーっ、ストップ!」
 ハートを撒き散らしながら突撃してきたのは、恋人のコニーだった。背中に突き刺さる数多の視線を感じながら、部屋の外へ誘導する。
「なに、どこへ連れて行く気?」
「さっきの所はいろいろなひとがいるからさ、騒いでほしくないんだ」
「むう……」
 ろくに挨拶もせずコニーの抱擁を制したため、完全に機嫌を損ねてしまった。 でも、久々に見るむくれた表情が、この上なく可愛らしい、と思う。

「さあ、入って」
 空いている監房に案内すると、「囚人のお部屋でしょ」と切り捨てられた。
 休憩室や食堂には誰かしら居るだろうから、ここが適所なのだと説明すると、コニーは納得したようだった。
「ここでならいいの?」
「うん」
 途端にコニーは表情を緩めて、ぎゅっと抱きついてきた。
「会いたかったよお……!」
 全身に染みついた花の香りを嗅ぎながら、おれも、と答える。 こんな幸せな一時が訪れるとは、思っていなかった。嬉しくて、意外だ。

 先ほどから思っていた疑問を口に出す。
「なんで来たの?」
 コニーが、信じられないといった表情で後ずさる。
「それが1ヶ月振りに会うフィアンセに対する言葉!?」
「……ごめん。冷たく言いすぎたかも」
 我ながら、すぐ折れる。コニーもコニーで、本気で怒ってはいなかったらしい。顔いっぱいに喜色を浮かべて言う。
「仕事で近くの町まで来たから、寄ってみたの」
「刑務所には来るなって言ったじゃん」
「なんでよ。仕事してる姿、一度くらい見たっていいでしょ」
「だって、いろいろ危ないし、男ばっかだし……」
 コニーは一瞬ぽかんとした表情を見せたが、再びカンシュコフに抱きついた。
「カンシュコフだいすき!」
 真意が伝わったのは良かったが、さりげなく腹の肉を揉むのはやめてほしい。

愛情リフレイン

(会いたかった抱きしめたかった)