暖かな陽気のなか、ユメとジョウブレイカーは牧場にいた。辺りにはタンポポが咲いている。
「できた! じゃーん!」
 ユメが掲げたのはタンポポの花輪だ。大きめのそれをユメは座ったジョウブレイカーの頭にかけた。
「うん! いい感じ」
「ありがとう! 嬉しいよ」
 微笑んだジョウブレイカーは、「僕も作ってあげたいな」と花を眺めた。一輪のタンポポにそっと手を伸ばしてみる。かろうじて摘むことはできたが、手が大きいため裂いたり結んだりすることはできない。
「だめだ……できそうにないや」
 ユメはジョウブレイカーの手に触れた。
「細かい作業はできなくても、あなたの手、大きくて優しくていいと思うよ」
「そうかなぁ……」
 しょげるジョウブレイカーのもとに「何やってんの?」とスラッシュがやって来た。
「私が花輪をあげたところなの」
「僕も作ろうと思ったんだけどできなくてさ」
「なるほどね。指輪ならすぐできそうだな」
 スラッシュはタンポポを摘んだかと思うと、茎を裂いてユメの左手の薬指に結びつけた。
「スラッシュ、なんでそんなことするんだ!? 僕の気持ちを知ってるでしょ!」
「ジョウブレイカーの代わりにやってあげただけだって!」
「ふたりとも喧嘩はやめて!?」
 ユメが割って入るとふたりは落ち着きを見せた。
「ところで、僕の気持ちって?」
「言ってなかったね。君のことが……好きなんだ」
 ジョウブレイカーは言って、恥ずかしそうに両手を握り合わせた。
「ほんと? 私も好きだよ。ジョウブレイカーのこと」
「えっ、じゃあ両思い? やったー!」
 ジョウブレイカーはユメを抱き上げてくるくると回った。
「よかったねーふたりとも。僕はいつくっつくかとやきもきしていたんだよ」
「ご心配おかけしました」
 ユメが言って、ジョウブレイカーと顔を見合わせた。どちらも照れ笑いをしてうつむいてしまう。
「ああなんて初々しい。僕も恋したいなぁ」
 スラッシュの呟きが春風に溶けていった。

花を結ぶ