※小説版の設定を取り入れています。かつ捏造があります。
ある城の地下。椅子に座って読書をしていた光の精霊は、オルゴ・デミーラが来たのを見るや本を閉じた。
「闇の精霊よ。ここから出してください」
「我には名前があると教えたはずだが? ユメ」
デミーラはユメの顎に手を添えて上を向かせた。ぽつりと呟かれた名前は、そのつど光の精霊と呼ぶのが煩わしいためつけられたものだった。
「あなたのつけた名など……」
ぷいっと顔をそらしたユメに、デミーラはくつくつと笑った。
「強情なことだ。まだそれだけの元気があれば、今夜も我の相手ができるというものだな?」
デミーラはユメの足につながれた鎖を引っ張った。
「あっ!」
ベッドに倒れ込んでしまうユメ。デミーラはその上に乗ると首筋に噛みついた。舐めたり吸われたりする感触が生々しく、ユメは負けじと声を張った。
「お願いです。もとのあなたに戻ってください。そして共に人々を見守りましょう」
唇を離したデミーラはせせら笑った。
「それはできぬ相談だな。我を魔王にしたのはほかでもない人間たちだぞ? 奴らの負の感情が強大な今、精霊に戻ることは不可能だ」
ユメは正論に黙ってしまった。こうなってしまった今、誰かが魔王を倒すのを待つしかないのかもしれない。
デミーラはユメの耳に口づけて、歌うようにささやいた。
「神に勝利し、世界の封印を終え、残すはお前だけなのだ……」
ユメはくすぐったさと心地よさを感じた自分を恥じた。
「時間はたっぷりある。ユメ……お前の心を手に入れるまで、何度でもその体に刻み込んでやろう」
深い闇