「パラセクト……お願い、どいて」
 草の上に横たわったままの君が言った。その声音には戸惑いの色が浮かんでいる。体を押し倒した私を訝っているのだ。
 これまでのパラセクトと、何かが違う。
 うっすらとそう感じたらしい君は、私の脚を控えめにどかそうとするが、重たい私はびくともしない。むちゃくちゃに暴れたなら何とかなったかもしれないが、優しい君はあくまで私を尊重している。
 けれど、その優しさは今は亡きパラスに向けたものだ。キノコである私のことは、パラスのおまけか何かだと君は思っている。そのことが我慢ならない。

 私はしびれごなをまき散らした。
 まともに吸い込んだ君はひとしきり咳き込んだあと、「どうして……こんなことするの……?」と弱々しく呟いた。
 まだ口がきけるのか。助けを呼ばれたらたまらないので、私は胞子をつけたツルの先を君の口へ差し込んだ。体が強張ったものの、やはりというか噛み切るそぶりなどは微塵も見せない。
 すぐに毒が効いて咥内が弛緩したのを確認して、ツルを抜いた。しびれごなが効いているので、手足を拘束する必要はなさそうだ。

 君も馬鹿だな。私に押し倒された時点で大声を出せばよかったものを。
 この先に待ち受ける行為を予期しているのか知らないが、君の瞳には疑念と恐怖の色が見える。
 宿主がやらないようなことをして、私の存在を分からせる。この試みはすでに成功したと言ってもいい。けれども、やるなら最後まで。

 もう一箇所、胞子をまぶしておくべき場所がある。ツルでスカートの中をまさぐり、君の肌に触れた。そして、下着の中の秘めた部分に胞子をつけた。外側と内側の浅い部分に、丹念にツルを這わせる。
 君は呂律の回らない口で、なんとか、やめてと言った。
 もちろんやめない。
 たしか人間の女性は、男性で言うところの肉棒にあたる所が好いのだったか。はるか昔に耳に挟んだ知識を動員する。君の秘部の小さな芽を円を描くようにゆっくりとこねると、君の口から吐息がもれた。
「うんっ……あ、うう」
 せっかくなのでもう何本かツルを出し、洋服の隙間から胸のふくらみや脇腹を撫でてみる。
 上と下とをしばらく刺激していると、秘部から透明な露があふれてきた。一方で私の生殖器官もふっくらと血が通ってきた。
 そうか、私は興奮しているのか。
 初めての試みだったが、なかなか悪くない気分だった。私の一挙手一投足に君の反応があるのは。

 さてそろそろか、と私は露を垂らしている割れ目へツルを差し込んだ。愛液でなめらかになったそこを、ぐちゃぐちゃとかき混ぜる。
「うあ……や、め……パラ……セク、ト」
 力なく投げ出された腕が少しだけ動く。
 この様子なら、と私はツルを抜き出し、代わりに生殖器をあてがった。初めて使うからどうなるかわからない。
 ゆっくりと体重をかけて押し進めていくと、じっとりと温かな肉が私を包んだ。湿った場所を好む私にはなかなか心地よい。ツルで慣らしたといっても狭いそこが、ぞくぞくする快感を与えてくれる。
 そのまま前後に動き始めれば君のくぐもった声が少し大きくなった。私はあらゆる感情をこめて腰を打ちつけた。
 さあ、私を識るといい。宿主とは似ても似つかない私を。
 私はひとしきり動いたあと欲望を君の中に吐き出した。役目を終えたものをずるりと引き抜く。君に植えつけた胞子と精子が、いったいどんな影響を及ぼすのかは未知数だ。
 どうなってもいい。嫌われてもいい。君が私を認識してくれるならば。
 そんなことを考えながら私は君の体を見下ろした。

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