日が沈んでしばらく経った。ハッシュタグとツウィッチはプロジェクターで映画を見ていた。スラッシュとジョウブレイカーは船を漕いでいる。
その脇でナイトシェードは義足をいじっていた。ドットが使う物だ。
ユメは読書を中断して、飽きもせずその作業を眺めていた。ここだけの話、義足を母の日のプレゼントにするのだそうだ。
「ナイトシェードはすごいね。人のためにそんなに頑張れるなんて、尊敬しちゃうな」
「好きでやってることだから苦にならないんだ。ほとんど自己満足だけど人のためになるなら嬉しいね」
そう言ってにっこりする彼は、近頃フクロウの像をスキャンしたそうで見た目が変わった。けれど中身は変わらず聡明だ。ユメは以前の見た目も好きだったが、今の深緑の姿もいいなと思っている。恥ずかしいので言わないが。
ナイトシェードは時計を確認し、「もうこんな時間だ」と作業の手を止めた。
「そろそろ帰るかい? 送っていくよ」
「うん。おいとまするね」
ふたりは並んで歩いてガレージの外に出た。立ち止まったナイトシェードは「そういえば、言ってなかったことがあるんだ」と呟いた。
「なあに?」
「ボク、飛べるようになったんだ!」
ユメは目をパチパチさせた。「それ本当?」
ナイトシェードは翼を出して「ほらね」と言った。そしてユメをお姫様抱っこしたかと思うと空に舞い上がった。眼下に道路や牧場が流れていく。
「すごい! 飛んでるよ!」
ユメは叫んだ。
「どう? 風を感じて気持ちがいいでしょ」
「そうだね。すごく……いい気持ち!」
ふたりはユメの家を目指した。飛行は目立つが、夜なのでたぶん目撃者はいないだろう。あっという間に到着してしまい、ユメは名残惜しく思いながら地に足をつけた。
「ありがとうナイトシェード。まさか飛べるなんて思わなかった」
「喜ばれてよかった。君さえよければいつでも空を散歩できるよ」
それじゃあ、おやすみ。どちらからともなくハグをしてふたりは別れた。ナイトシェードはフクロウにトランスフォームして飛んでいった。
それを見送って、ユメは飛行の余韻に浸った。
空を自由に