ドナルドは明日のパーティーに必要な物を買い込んでいた。はるばるやって来る友人のために、それはもう色々と。積み上がった荷物で目の前が見えなくなるほどに。
 山積みの箱が危うい均衡を保ちつつ歩いていくと、角の向こうから激走してきた一羽の鳥と衝突した。ドナルドは尻餅をつき、荷物は派手な音をたてて崩れた。

「ワーッ!」
「ひゃあごめんなさいごめんなさい!」
 飛び起きたドナルドはひとこと言ってやろうと腕まくりをしたが、目にした相手の姿に怒りを削がれた。菜の花のような羽毛。頬は赤く丸い形に色づいている。彼女の模様なのだろう。
「お怪我はありませんか?」
「あぁ……うん。大丈夫だよ」
「本当にごめんなさい。信号が変わりそうで、走ってしまって」

 話をすれば近所に住んでいるというその鳥は、家まで荷物を半分運んでくれた。
「どうもありがとう。ぼくが持ってるから、鍵を開けてもらっていい?」
 快く頷いた黄色の鳥がドアを引くと、
「サプラーイズ!」
 クラッカーを打ち鳴らした二羽の鳥が、勢いもそのままに熱烈なハグをした。
「元気にしてたかいアミーゴ! しばらく見ないうちに縮んだな!」
「久しぶりだねえドナルド。毛色変えた? それにいい匂いがする」
 二羽は目を白黒させている哀れな小鳥を見た。

「新しい彼女?」と緑の鳥。
「違う違う! ご近所さんだよ。二人とも、来るのは明日の予定だったろ?」
 呆れた声音のドナルドに、赤い鳥は「きみを驚かせたくてさ!」と笑った。
「びっくりさせてごめんね。お嬢さん」緑の鳥が恭しく礼をする。「僕はホセ・キャリオカ」
「俺はパンチート・ロメロ・ミゲル・フニペロ・フランシスコ・クインテロ・ゴンザレス」
 滑舌なめらかに喋りあげた赤い鳥はドナルドの肩を引き寄せて、
「で、ドナルド。これでスリーカバレロ! 三人の騎士さ!」
「どうぞよろしく。ホセさん、ゴンザレスさん」
 黄色い鳥は荒れ狂う情報の波から辛うじて聞き取れた名前を口にした。

「硬いなぁー。パンチートでいいって!」
「それで、三人のハバネロが……」
「カバレロね」ドナルドが小さく口を挟む。
「カバレロのみなさんは、とっても仲良しなんですね」
「そうだよ。僕らは大親友なんだ。明日のパーティーが待ちきれなくてね、前夜祭を開くことにしたんだ」ホセが言った。
「そうだったのか。じゃあ、きみも参加しない?」
 ドナルドに問われた鳥は目をパチクリさせた。
「え? でも……」
「いいっていいって、遠慮しないで! できたてのタコスを食べてくれよ!」
 パンチートに背を押される彼女の首に、紙の飾りをホセがかける。
「ヴァタパもあるよ。ムングザもね。それで、きみのことをいろいろ聞けたら嬉しいな。ね、アミーゴ?」
 パンチートとドナルドはにっこりした。

ようこそ小鳥さん