鉱石を探して天空の古戦場に立ち入った一行は、キャンプ場を発った。進むとやがて洞窟が途切れ、目の前に空が開けた。浮島の外側に出たのだ。
 どこまでも続く雲海に開放感を覚える。だが落下の危険もあるので気は抜けない。
 下って右側は、鉱石の力について述べた石碑があるだけだった。
「行き止まりかぁ」
 テイルは地図に記入した。
「こっちの道がダメってなると……らせん状の通路に戻るしかないのかしらん?」シルビアが小首を傾げる。

「待って」と。見ると崖の縁に立っていてテイルは肝を冷やした。
「ツタがあるよ。ここから降りられそうだ」
「おい。こいつは相当長ぇぞ……」下を覗いたカミュが言う。
 怪鳥の幽谷など道なき道を踏破してきた一行にも不安の色が浮かぶ。とりわけ高所を苦手とするマルティナは眉を寄せたまま黙している。見かねたセーニャが、
「ドラゴンに乗って行くことはできないでしょうか?」
「しかし、あれはわりと小柄じゃからなぁ。突風にあおられても平気かどうかは保障できんぞい」
「行きましょう。やるしかなければ、やるだけよ」
 マルティナの胆力にテイルは感心した。
「じゃあ、僕が先に行って様子を見てくる」
 は早々に手袋をつけると、率先してツタを降りていった。根っからの勇者である。

 テイルは、はたと気づいた。
 スカートの中が見えてしまわないだろうか?
 いや、レギンスを履いているし、足を交差させるから大丈夫かもしれないが万一見えたら気恥ずかしい。
 というか降りるのに精一杯で気が回らないというのが本音だ。うっかり羞恥ゆえに転落死したら浮かばれない。
 そわそわと考えているうちにシルビアとグレイグが降りていった。
 は洞窟のほうに目が向いているだろうから問題ない。シルビアも乙女ゆえほぼセーフだ。グレイグは……むっつりと騎士の生真面目さが同居しているので五分五分だ。先に降りたものは仕方ない。

 順番を譲ったので、今度はセーニャとマルティナが降りていく。
 渋るテイルの様子に、側に来たカミュが「なあ」と小さな声でこぼす。
「下に履いててもそんなに恥ずかしいもんなのか?」
「……はい?」
 ほっほっほ、とロウが笑う。
「おぬしらも大人の階段を上ったか」
「おい、じいさん。オレはまだ何もしちゃ……」
「む? そうなのか? まあよい。老いぼれは先に行くでの。ふたりはゆっくり来るといい」
 楽しそうに言って降りていく。どうやらカミュがテイルの服を脱がしたことがあると捉えたらしい。
「何か今ものすごい誤解を招いたような……」
「悪い。口が滑っちまった」
「いや、なんで知ってるの? レギンスを履いてるって?」
「岩をくぐるときにちょっと、な」
「見えてたなら教えてよね……! すごく恥ずかしいよ」
 スカートがまくれたときの保険のために履いている物だが、だからといって見せてもいいということにはならない。
「てか、あのじいさん。さりげなく先に行ったな……」

秘めた衣