戦闘後、ユメはマーニャの顔が何だか険しいのに気づいた。
「ソロ、あたしお腹痛くなってきちゃった」
「大丈夫? トイレならそっちの草むらで……」
「違うわよ! とにかく、馬車に戻らせてもらうわ」
「私も下がっていいですか? マーニャを看てあげたいです」
 ユメの申し出にソロは頷き、代わりにライアンとブライが馬車から出ていった。
 中で横になるマーニャにユメはブランケットをかけてあげた。
「どうかしましたか?」とミネアが言う。
「お腹痛くなっちゃってさぁ……」
「月のものですか? 姉さん」
「いや、お昼に食べた魚に当たったか、お腹が冷えたのかのどっちかね」
「姉さんも私みたいにきちんとした洋服を着たらどうですか?」
 ミネアの声には呆れが含まれていたが、マーニャは「これは踊り子のアイデンティティだから」と譲らなかった。
「ねえ、お腹触っても大丈夫?」
 ユメにマーニャが頷くと、ユメはブランケット越しの腹にそっと両手を当てた。快復を祈りながら、そのままの体勢を保つ。マーニャは長いまつ毛を伏せてゆっくりと呼吸した。
「私の国にはレイキという手当て療法があるんです。生命エネルギーを流すんですが、体温が伝わるだけでも癒されますよね」
 落ち着いた口調で語るユメにマーニャは「うん、なんか気持ちいい……」と応えた。
 しばらくしてから、ユメは手を下げた。目を開いたマーニャは手招きした。
「ユメ、ちょっと」
「なんですか?」
 体を寄せたユメの髪を一房手に取り、キスをした。
「手当してくれたお礼よ」
「ふふ、ありがとう」
 ユメは照れたように笑った。

手を添えて