「テランマッサージ開店のお知らせ……?」 
 ポストに入っていた招待状を手に基地に来てみると、ハッシュタグが恭しく礼をした。
「いらっしゃいませ。お客様一名様ですか?」
「はい」
「こちらのベッドへどうぞ」
 ユメは干し草にタオルをかけたベッドに横になった。ふかふかで、なかなか快適だ。
「お客様、何かお辛いところはございますか?」
「えーと……肩こりと足のむくみかな」
「かしこまりました。では、こちらを使ってほぐしていきますね」
 ハッシュタグが手にしたのはスティック型のマッサージ機だ。スイッチを入れると先端が振動するやつだ。
「これは捨てられていたんだけど、ナイトシェードが修理してね、振動に加えて先端が温まるようになったんだ!」
 店員口調をやめたハッシュタグが興奮気味にささやく。
「しかも使用中に光る! リラックスできる音楽も流れるよ」
 どこかで聞いたことのあるクラシックが流れ始め、ユメは感心した。
「いつものことながら多機能だねぇ」
「それでは、始めていきますね」
 ユメの肩に手を添えて、スイッチを入れたマッサージ機を当てた。ほどよい振動が伝わってくる。
「力加減はいかがですか?」
「ちょうどいいです」
 ハッシュタグは丹念にユメの肩をほぐし、今度はふくらはぎをほぐしていった。
「血行がよくなるね。気持ちいいよ」
「それは何よりです」
 ふくらはぎのマッサージを終えたかと思うと、今度は腹に機器が触れた。振動はなく、ほのかに温かい。腹全体をくるくると撫でられているうちに、ユメは眠気が出てきた。
「それでは最後に……」
 ハッシュタグはマッサージ機を振動させてユメの股間に当てた。ユメは素っ頓狂な声をあげた。
「そこはパーソナルゾーンって言ってね!?」
 ぴたりと機器が止まる。「怒った?」と、ハッシュタグは細い声で訊いた。
「ううん、怒ってないよ。ちょっとびっくりしただけ」
「喜んでくれるかと思ったんだけどなぁ……」
「さては大人向け雑誌を読んだね?」
 ユメはくすくす笑った。
「でも、ハッシュタグになら触られてもいいかも」
 小声を拾ったハッシュタグが、「ほんと!?」と顔を輝かせる。
「どこが気持ちいい? 言ってみて」
 楽しそうに言ってスイッチを入れる。急に攻め口調になったなとおかしく思いながら、ユメは快感を受け入れた。
「あ、そこいいな。ちょうど私の――」
 外から話し声が聞こえて口をつぐんだ。ハッシュタグと顔を見合わせる。体を起こし、まるで秘め事がなかったかのようにふたりは並んだ。
「いい? 股間のマッサージは、ロビーたちにはやっちゃだめだよ?」
「わかってるって! ふたりだけの秘密だね」
 ハッシュタグはパチンとウインクをした。

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