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街の灯りで星は見えないけれど、ビルの光はまた違った良さがある。 どれも暗闇では困るから点けているのだ。灯りの下で生活する一人一人の人生を思うと、おもしろい。
今、観覧車のイルミネーションが21時を示した。
ここに着いてすぐ「綺麗だね」と言葉を交わしたきり、私もオプティマスも、何も言わない。
けれど、彼との沈黙は気まずいどころか、心地よい。夕食でお腹が膨れたせいもあってか眠気を覚えた私は、ふっと息を吐いた。
海老のクリーム煮、おいしかったな。柔らかな身の感触が、まだ口の中に残っているようだ。 私も日本人の例にもれず海老好きだなあ、と笑みがこぼれる。
「ユメ」
その声はいつになく張りつめていて、彼らしくないな、と思いながら顔を向ける。
オプティマスが意を決したように口を開く。
「ユメと過ごした時間は、わたしの人生において一時でしかない。だが、特別な輝きを放っている」
もしかして、プロポーズされるかな。自惚れではない、と思う。
「種族は違えど君を愛している。これからも、わたしのそばにいてほしい。だから――」
結婚。その二文字に身構える。ああ、顔が綻んでしまう。
「――だから、わたしに毎朝、味噌汁を作ってほしい」
「はい、喜んで……え?」
「ん?」
今、彼は何と言ったか。味噌汁? 味噌汁が飲みたかっただけ? いや、それにしては前置きが長すぎる。
急に戸惑いだした私を見て、オプティマスの顔がみるみる曇っていく。そんな切ない表情しないで。
「わたしではいけないか?」
「あの、今のってプロポーズ?」
「……ああ、日本人女性への伝統的な台詞だと聞いたが」
それどこ情報よ。
喜びと可笑しさがないまぜになった気持ちが押し寄せる。
眦からあふれそうな涙は、嬉し泣きだろうか。それとも。
「うん、オプティマスのためなら毎朝、作るよ」
薬指に光る
(きっと朝食のたびに思い出す)