「曜日別でみると月曜日の自殺が最も多くて、土曜日が最も少ないんだって」
興味深い。曜日が人の心に影響を与えることが、よくわかる。資料にはさらに、月別でみると3月が最も多い、とある。
「わかる。わかるなー。土曜日の幸福感はんぱないよね」
「“毎日が”“月曜日”」
「だっ大丈夫!? サウンドウェーブ死んじゃやだ!」
思わず、こたつから身を乗り出して華奢な手を掴んでしまった。銀の指についた細かな傷は、彼の苦労を思わせる。
「……」
「この細い指にたくさんの仕事がのしかかっているんだね……」
「“ぬくい”」
「知ってる? 手が温かい人は心が冷たいんだって」
首を傾げる様子を見るに、初耳のようだ。
「逆に手の冷たい人は心が温かいんだよ。だからサウンドウェーブは心が温かいの」
「……“チクリ屋が”」
それは、いつかの諍いでスタースクリームが放った言葉だった。再生すると自嘲のように聞こえる。
「組織のためなんでしょ? 気にしなくていいのよ」
それに、常にアンテナを張り巡らせているのは疲れるはずだ。私がもし彼と入れ替わったら、頭がパンクするのではないかと思う。
「いつも頑張ってるよね……」
労いの意味を込めて、彼の手をさする。でも、たまには休んだら? と語りかけると、サウンドウェーブはもぞもぞとこたつに潜り込み始めた。
「え、私も?」
横たわって、暗いバイザーをしばらく見つめていると、ブレインサーキットの音が小さくなってきた。眠ったのだろうか。勉強を再開するべく彼の手を解こうとしたが、しかと握られていて動かなかった。
まあいいか。
そうして、私も目を閉じた。
blue monday