悶々とした気持ちに耐えられなくなり、アイアンハイドの装甲に軽く頭を打ち付けた。
ごん、といい音がする。
「どうした?」
「今日ずっともやもやしてるの。あなたのせいよ」
うつむいているせいで彼の表情は見えないけれど、パチパチと瞬きをする音が聞こえる。私の言葉に戸惑っているのだ。
思い当たる節がないのだろう。原因は私にあるのだから、当然の反応だ。
ややあって、アイアンハイドが恐る恐る尋ねてきた。
「悪い、何か気に障る事をしたか?」
「してないけど――」
(でもやっぱりあなたのせいでもあるのよ。私をその気にさせたから……)
恋をしたら、仕方ないじゃない。誰だって思う、でしょ? でもあなたに失礼だし、自分が惨めな気がして言えない。言いたくない。
「察して頂戴」
「ユメ。言葉にしてくれないと、わからないこともある」
言えっていうの、この不満の理由を。体の熱を説明しろというの。
(アイアンハイドのばか。好きにならなきゃよかった)
――ああ、ますます自分が嫌になる。ひとりで熱くなって、先走って。
もう、この気持ちは忘れよう。見つからないように頑丈な蓋をして、心の墓場に埋めましょう。
顔をあげて、わずかに微笑む。我ながら力ない笑みだ。
「悪いわね。ちょっと具合が悪くて、当たっちゃった」
何か言いたそうな顔のアイアンハイド。これ以上優しくしないでよ。
抑圧リビドー