白く豊かな泡を腹に当て、胸へと滑らせる。すると、どうしてか胸の頂が固くとがって存在を主張しはじめた。ふくらみ全体を泡で覆う際に指が軽くかすめてしまって、じんじんと痛む。
まさか自分の手つきに興奮したわけじゃあるまいし、反射のようなものだろうか。敏感すぎるのも困りものだ。
続いて腕を太股に伸ばしてーー
「痛っ」
一瞬、びりっとした痛みがはしった。腕が乳首に当たってしまったのだ。
隣のシャワー音が止まったかと思えば、どうしたの、とカガリさまの声がした。
「いえ、なんでもないですよ」
「……なんでもない……わけない」
白い仕切り越しに冷静な声が聞こえる。
「ほんとにたいしたことじゃないんです」
「心配。……どこか……切った?」
「いえ、その……」
中途半端に言いかけたせいで、言葉を継がなくてはならなくなった。
「腕を乳首にひっかけただけです」
あはは、と笑って泡を洗い流す。ちょっと恥ずかしいがたぶん私は気にしすぎなのだと思う。一緒にシャワーを浴びる仲だ。乳首がなんだというのだ。
スミビ、と声のするほうを振り返ると、カガリさまの裸身が仕切りの外にあった。
「……だいじょうぶ?」
「ええ、なんともないです」
少しばかり動揺する心を落ち着けて、カガリさまの濡れた紫髪を見る。あまり体をじっと見るのはよくないだろうと、視線をそこに固定しようとする。
「心配してくださってありがとうございます」
カガリさまは私のへそのあたりに視線を落としている。どうかしたのだろうか。
「えーと、カガリさまはもう上がりますか? 私はそろそろ上がろうかなと」
私の緊張をよそに、スレンダーな体は無言で距離を詰めてきた。お互いの息がかかりそうになる。
こういうのを裸の付き合いと言うのだったか。
カガリさまはきっと、ここでしか話せない仕事のコツなどを教えてくれるのではないか――。焦る頭がそう導き出す。
すると、カガリさまはまるでソフトクリームを口に含むみたいに、ぱくりと私の乳房を口に含んだ。思わず声をあげる。
紫の頭が離れて、「だめ?」と訊く。
「こ、こういうのは好きな人にするものです。遊び半分でしていいものじゃありません」
「……好きだと……言ったら?」
やんわりと壁のタイルに押しつけられる。どう返事をしていいかわからない。黙っているとにわかに脱衣所が賑やかになり、カガリさまはおもむろに身を引いた。
「返事…………待ってる」
そう言い残してシャワールームを出ていった。
私はあまりのことに立ちすくんでいた。とりあえず、水でも浴びようか。洗い上げた頭を垂れ、蛇口をひねった。
接近