「おはよう……」
 眠い目をこすりながらダイニングキッチンに来ると、予想だにしない光景が広がっていた。
(サウンドウェーブが料理してる!)
 すらりとした指で巧みに菜箸を持ち、卵を溶いている。白いプレートには、ほかほかと湯気をたてるケチャップライス。コンロには熱せられたフライパンが。彼のボディに油が跳ねないかと少し心配になる。
 その姿はまさに、
「お母さんだ……」
 サウンドウェーブが何か言いたげな視線をよこす。
「褒め言葉ね!」
 慌てて弁明すれば、彼は気を取り直したのか、フライパンに向き直り卵を投入した。手慣れた様子で、じゅう、と音をたてる卵を広げていく。
 彼らはレシピを直接ダウンロードできるから、手順は完全に解っているのだろう。
 でも、それをそつがなくこなせるのは、サウンドウェーブの器用さがあってのことだと思う。

 私は席について、丸く焼けた玉子をライスに乗せる様子を見つめた。
「朝からオムライスって贅沢だなあ」
 なぜ私の食べたいものが分かったのだろう。
 そういえば最近「オムライスが食べたい」と独り言を呟いたような。けれどその時、彼はそばにいなかった気がするのだが……はて。

 皿を持ったサウンドウェーブがやってきた。
「お、完成?」
 目が覚めるような黄色の上には、ケチャップで書かれた「ユメ」の文字があった。
「うわーありがとう! いただきます」
 一口食べると、自然と笑んでしまった。
「うまー!」
 手拭きで手をふきふき佇むサウンドウェーブの姿が、どこか自慢げに見える。
 今度、彼に似合うエプロンをプレゼントしようと心に決めたのだった。

朝食はきみのとなりで

(裸エプロンだわ、と思って吹きそうになったのは秘密)