「なあプーアル、晩飯は宅配ピザにしないか?」
「いいですね! どんな味にしますか?」
ヤムチャとプーアルはのんびりとピザ屋のチラシを眺めて、いくつかの商品を注文した。ちょっとした特別感に心躍らせるなか、店員が来るのを待つ。
30分ほど経ってから、インターホンが鳴った。
「はいはーい」
プーアルが飛んでいってドアを開けると、制服に身を包んだ女性が微笑んだ。
「こんばんは! ご注文のピザをお届けに来ました」
「ありがとうございます」
「こちらMサイズが2枚と……コールスローサラダがおふたつですね」
「はい!」
差し出された箱と袋をテーブルに運んだプーアルは、財布から代金を支払った。
店員は下がるかと思いきや、何やら熱っぽい視線をプーアルに送っている。
「あの……。恐縮ですが、少しばかりもふらせていただけませんか?」
「もふ……!?」
「私、ふかふかの生き物に目がないものでして」
いいですよ、という返事に被せるようにして、素早く手が伸びる。プーアルの頭をさわさわと撫でた店員は、
「わあ! ふわふわですね」
ウキウキ声で言い、プーアルを両手でホールドして腹毛に顔を埋めた。
「すっごくいい匂いがしますねーっ!」
「た、助けてヤムチャさまーっ!」
あまりの勢いに思わずプーアルは叫んだ。
「キミ、プーアルを離すんだ!」
「プーアルちゃんっていうんですね」
プーアルを解放した店員は陶酔した様子で呟いた。
「ボクは男の子だ!」
「失礼、プーアルくんですか。では、またのご利用をお待ちしております!」
店員はとてもいい笑顔で一礼して去っていった。
「大丈夫か?」
「はい。なんとか」
「変なやつだったな。まあ、冷めないうちに食べようぜ」
ふたりは気を取り直して、美味しい時間を過ごした。
それからひと月が経過したある日。ヤムチャはまたピザを食べたくなってしまった。
プーアルに相談すれば、「あの店ですか?」とやや警戒された。
「プーアルには悪いが、オレはあの店の味が好きなんだ」
「確かに美味しいですもんね。じゃあ取りましょう」
「ああ。前回とは別の店員が来るかもしれんしな」
今回も注文して30分ほどでインターホンが鳴った。
念のため、プーアルは筋骨隆々の男性に変身してドアを開けた。
「こんばんは! ご注文のピザをお届けに来ました」
現れたのは、この前と同じ女性でプーアルは一瞬たじろいだ。けれどもこの姿ならバレやしないだろう。声は変えられないが、できるだけ低い声を出してみる。
「ご苦労さま」
「まあ! プーアルくん、今日はたくましいお姿ですね」
「な、なんでバレたの!?」
プーアルはポンと音をたてて、もとの姿に戻った。
「私の目はごまかせませんよ。キミの匂いがしたのでね」
「へ、変態だー!」
思いきり後ずさったプーアルの代わりにヤムチャが商品の受け渡しをした。
「キミの店のピザはお気に入りなんだ。また頼むよ」
「いつもご利用ありがとうございます。それで……。またもふらせていただいても――」
「ダメです」とプーアル。
「わかり……ました……」
ものすごく落胆した様子の店員に、プーアルは罪悪感を覚えた。
「じゃあ、ちょっとだけならいいですよ」
と、近づくやいなや無遠慮に腹毛を吸われ、プーアルはまた叫ぶのだった。
過度な配達