聞き慣れた宇宙船の音がしたと思ったら、しばらくしてバッグを提げたユメが歩いてきた。
「やっほーキテラ」
破壊神候補である彼女はひらひらと手を振った。
「ユメか。今日は何の用だ?」
「ちょっと面白いことを知ったから遊びに来たんだよ」
ユメはクッションを整え、キテラの隣に座った。
「第7宇宙の地球のハロウィンって慣習を知ってる?」
そう訊かれたキテラは第7宇宙という言葉にひっかかりを覚えながら、「いいや?」と答えた。
「そこでは死後の世界の扉が開く時期があると信じられてて、悪霊から身を守るために仮装をするんだって!」
「ほう?」
バッグを探り、「じゃーん!」と取り出したのは猫耳カチューシャだ。楽しげな笑みをたたえてそれを身につける。似合ってはいるが、猫耳というとどうしても反目しているあの破壊神の姿が思い浮かぶのだった。
「ケッ、センスねえなあ」
「え、そう?」
「その耳、切ってやろうか? オレみたいな丸い耳が最高にして至高だろ」
ユメはきょとんとしたあと、
「そっかー。キテラってば、お揃いがよかったんだね。私、そこまで考えが及びませんで」
緩んだ口で、へへっと笑った。
ちょっと口が滑ったかなと思ったが、ペアルックというのも悪くない。
そうやって、どんどんオレ色に染まれ。
キテラはユメを眺めてシシッと笑った。
染色