「ごめんねコニー。アルコールが入ってるとは思わなくて……」
「いいんですよ。間違いは誰にでもあります。それに、こういう時のために二羽いるんですから」

 大声で争っている兎がいる、との通報に駆けつけた帰りだった。大した事態でないのに呼んでしまった、と通報者に恐縮され、お詫びにと差し出された飲料を、コプチェフは迷わず飲み干したのである。
 まさかその場で飲むとは思っていなかったらしい通報者が、恐る恐る指摘したことにより、私は陽気なコプチェフを助手席に乗せることとなった。

「ボリス大丈夫かなあ」
「心配ですね。明日来るでしょうか」
「もう5分も走ればアパートだから、寄っていこうよ」
「へえ、このあたりなんだ……」
 署まで徒歩で15分ほどだろう。近くにスーパーもあり良い場所である。

「ボリス、コニーが来たら絶対喜ぶよー」
 具合が悪そうな仏頂面しか思い浮かばない。
「そうですかねえ」
「でも一緒にドライブした俺のほうが勝ち組だけどねっ」
「あはは」
 うまく笑えただろうか。これはもう、完璧に酔っている。署に帰ったら0794さんに任せよう。

 車が上り坂にさしかかり、エンジンが唸り声をあげた。
「ああコニー、坂上る時は前もって加速しておいたほうがいいよ。ほら、ラーダちゃんが苦しそうでしょ」
「はい、気をつけます」 (女の子なんだ……)

(このくらいで退いてはいけない)