ケフェウスは、いつもそばにいるユメがいないことに、いささか居心地の悪さを覚えていた。
 復興作業に必要な道具を彼女が取りに行ってから、はや十数分が経過している。
「いったい何をやっているのだ……」
 休憩するにも落ち着かず、方々を探し回れば、AM星人の男と談笑しているユメを見つけた。
 その姿を見るや、ずしりと胸の重みが増すようで、ケフェウスは無意識のうちに胸に手をやった。

 最近、ユメが誰かと関わっているとモヤモヤする。
 ふたりの間に割って入ろうかと考えたところで、ユメがこちらに気づいた。
「ケフェウスさま、どうされました?」
「おまえがなかなか帰ってこないから、探しに来たのだ」
「それは、ご足労をおかけしました」
 男に挨拶して踵を返したユメと、並んで歩き出す。

 地球との戦いで唯一ケフェウスのもとに残った部下が、非戦闘員であるユメだった。
 これまでは、真摯で温かい眼差しが自分にだけ注がれているのが当たり前で、その特権を意識することもなかった。
 だが、大敗を喫し、AMプラネットの復興が始まり、彼女の眼差しが他へも向いたとき、ケフェウスの苦しみが始まった。

 ユメは今も変わらず自分を慕ってくれている。
 しかし、主君としての遠慮があるぶん、自分たちの関係は近いようでいて、むしろ遠い。

 ケフェウスは心を決めて、はたと立ち止まった。ユメが不思議そうに振り返る。
「ひとつ、頼みがある。ユメ」
「なんでしょうか?」
「その…………敬称をやめてはくれんか」
 大きな目を瞬かせたユメは、ややあって、
「様付けを……やめろとおっしゃるのですね?」
 と言った。
「そうだ」
 ケフェウスは手を差し出した。最初の友人が教えてくれた勇気と優しさを、今こそ発揮する時だ。
「余と、友だちになってほしい」
 驚きのあまり開いたユメの口が、深い笑顔に変わっていく。
「喜んで! ケフェウスさま」
 握手をしながらふたりは噴き出し、
「いいえ……ケフェウス」
 ユメは言い直した。
「改めてよろしくお願いしますね」
「うむ。よろしく頼むぞ」
 新たな絆を感じつつ、ふたりは再び歩き出した。

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