※ヒトデ夢主

 ああサカマタ、いいところに来てくれた。おはよう。ちょっとこのリボンを持ってくれないか。
 ……よくぞ訊いてくれた。日頃の感謝を込めて館長に私を贈呈するんだ。自分で巻き付けていたのだが、なかなか上手くいかなくてね。
 ……命は惜しくないのかって? なあに。平気さ。君も知ってのとおり私は丈夫だからね。腕の一本や二本取られたってなんともないが、近頃館長は機嫌が悪いだろう。彼の振る舞いにウツボやクマノミが青くなって心配するのが気の毒でね。矛先を私に向けようという訳さ。
 やめろと言うのかい。君のそういう優しさがたまらなく好きだよ。なに、私ではなく業務の心配をしていると。たしかに体が再生するまでは能率が落ちるからね。ふふ、そういうことにしておこう。
 まあ、試しに私を縛ってみないか。頼むよ。……うん。掃除でもなんでもするから。……ありがとう。君の好きなようにすればいい。
 ……いや。むしろ緩いくらいさ。もう少しきつくていい。上手いもんだね。
 ところでサカマタ。君は緊縛という言葉を知っているかい。アハハ、そんなに嫌がらなくても。君になら責められてみたい。果ては喰われてもいいと、ふと思ったまでだよ。
 気持ち悪い? 私にとっては誉め言葉だね。水槽越しに幾度も言われるものだから慣れてしまってね。この適応力が私の長所ではないかな。ねっ。そうだろう。……ああまだ話の途中だというのに。

優しい結び目