シルビアはサイト17の食堂でピザを頬張っていた。このピザ、なんと無料である。
 実はあるスキップの生成物であり、その在庫は尽きることがない。しかも驚くことに、利用する人間の好みに合ったピザが自動で生成されるのだ。そのため職員は食欲と健康維持との間で葛藤することになる。
SCP-458 The Never-Ending Pizza Box (はてしないピザボックス)
「シルビア、お前噂になってるぞ」
 同期のウォルターに声をかけられたとき、シルビアの口はピザでいっぱいだったので、少し眉を上げて続きを促した。
 ウォルターは席につくと――彼の皿にもピザが載っている――シルビアをまじまじと見つめた。
「SCP-049がお前の見張りを心待ちにしてるらしい」
 シルビアは喉を詰まらせそうになって、急いで水を飲んだ。コーラを選ばないのは健康へのせめてもの配慮である。
「な……なんだって?」
「奴が『交代の時間はまだかね?』と言うんで、そんときの担当が理由を訊いたらしい。そしたら、なんて言ったと思う?」
「なんて?」
「シルビア君の話が聞きたい、とさ」
 シルビアはしばらくなにも言えなかった。ただ、にやついているウォルターにいらっとした。

「いや、特別な話はしてないよ。この間はあまりにこのピザがうまいから、少し体重が増えた話をしたっけな。君にも食べさせてあげたいよってさ」
「んな話にどんな反応をするっていうんだ?」
「ふむ、とかそうかね、とか短い相槌だね。彼はあまり話す質ではないし、私が一方的に喋っていたようなものだから、てっきり煩がられてるかと」
 シルビアの口元に自然と笑みが浮かんだ。「うん、そうか。楽しみにしてくれてるのか」
 ウォルターは厚い生地のピザをもぐもぐやりながら、嬉しそうだな、と言った。
「私はね、ユニークな友人が増えることが嬉しくてたまらないんだよ」
 シルビアが満面の笑みで応える。
「お前ほんと色んなのと仲良いよな……。類は友を呼ぶってやつか? 一癖あるもんな」
「それは誉め言葉かい?」
 ウォルターは黙りこんで、シルビアがピザを完食するのを見ていた。ちなみにラージサイズである。続いてシルビアは手を拭うと、デザートのケーキに取りかかった。
「どうしたの?」
「いや……まじな話、俺は時々お前の胃袋がブラックホールに繋がっているんじゃないかと思う」
「はは、あり得る。腹部惑星君もいることだしね。だとしたら、私ほど働き者のスキップはいないね」
「よく言うぜ」

Pizza