基地でお泊り会をした夜、牧草のベッドで眠るユメをスラッシュは見つめていた。安らかな寝顔を見ていると胸が温かくなるような心地がする。
 髪が乱れていたので直してあげようとしたその時、ユメの眉間にしわが寄った。それだけではなく、何やら苦しげな寝言をもらしている。何と言っているかはわからないが、ただごとではなさそうだ。
 スラッシュはやや迷ってから、ユメの肩を揺らした。
「ねえ、大丈夫?」
「ん……」
 目を開けたユメは怯えたようにあたりを見回した。
「なんだ、夢か……」
「うなされていたようだから起こしたよ」
「うん。嫌な夢を見てた。起こしてくれてありがとう」
「嫌な夢?」
 ユメは唾を飲んでから口を開いた。
「暗い地下で体を燃やされたの。熱くて苦しくて……思い出すとゾッとする」
「大丈夫、こっちが現実だよ」
 スラッシュはユメの手を握った。「そうだよね」とユメが頷く。
「ところで、よく悪夢を見てるってわかったね」
 ギクリとした。ユメを穴のあくほど眺めていたなんて言えない。しかし、嘘をつくのもなんなので素直に告白することにした。
「寝顔がかわいいなーって見てたらさ、急に苦しそうな表情になったんだ」
「やだ、恥ずかしい。褒めても何も出ないよ?」
「それじゃ、もう一回寝る?」
「うん」
 ユメは目を閉じて、握った手を引き寄せた。
「スラッシュの手、冷たくて気持ちいい……」
 優しげな笑顔でそう言われ、スラッシュは愛しさで胸がいっぱいになった。
「何かお話でも読んであげようか?」
「ふふ、別にいいよ。その代わり私が眠るまで手を借りててもいい?」
「もちろんさ。ベッドが大きければ添い寝してあげられるんだけどね」
「それもいいね」
 いつかそうなるかもね……。ユメの呟きが空気に溶けていき、やがて寝息が聞こえてきた。スラッシュはユメを起こさないようにそっと手を解いた。もう少しこのまま寝顔を見ていようと口元に笑みを浮かべた。

安眠