太陽が中天にさしかかる頃、腕時計を見やった夜野が手を叩いた。
「よし、訓練はここまでにしよう。みんな、お疲れさま」
武器を下ろした隊員たちが息をつく。
「午後は敵襲がなければ鍛錬の時間にするから、そのつもりでいてね」
「はあ~~疲れたニャ~」
座り込んで空を仰ぐソルの横で、ヒューガルデンはカカシを片付け始める。
「お腹がすいて動けニャい……。指揮官さん、昼飯奢ってくれニャいか?」
「うん? いいよ。食券あるし」
「やった!」
ガバッと起き上がったソルが小躍りする。タダ飯、タダ飯と歌うご機嫌な声に、昼時を告げる鐘が重なる。
ヒューガルデンは片付けが済んだのを確認すると、足早に中庭を後にした。廊下が混み合う前に訓練所を去ろうとした――のだが。
「ガルデンさーん!」
人のいい声に呼ばれて振り返ると、箱を持ったフィックスが尻尾を揺らして駆け寄ってきた。
「野菜配ってるんで、よかったら貰ってください」
中にはツヤのあるトマトンやキャペツ、トゲの尖ったキューリなどがたくさん入っている。
「ありがとう。新鮮な良い野菜だ。君の努力が垣間見える」
「でしょお!? さすがはガルデンさん、お目が高い!」
フィックスは浮かれた声で言って、箱をさらに近づけてきた。「ささ、お好きなだけどーぞ」
「では……」
トマトンをふたつ貰い、キューリに手を伸ばしたとき、
「あ。ふたりもお昼一緒にどうですか?」
書類を手にした夜野がそばに来た。
「あ、はい。行きます行きます」とフィックス。
「私はいったん、森へ帰る」ヒューガルデンは答えた。
「そうですか。ゆっくりしてきてくださいね」
夜野は気にした風もなく微笑した。
「じゃあフィックス、この書類を出してから行くね」
「はあい。俺も配り終えたら行きますわ」
ヒューガルデンに向き直ったフィックスは、手にした野菜を見て首をかしげた。
「キャペツはいらないんですか?」
「昨日買った物があるから、これで充分だ。あとはほかの者にやってくれ」
ソルやソフィエロなど、食を喜ぶ隊員の顔が脳裏に浮かぶ。
「わかりました~。それじゃ、また後で」
人の増えてきた廊下を歩きながら、ヒューガルデンは我知らず息をついた。
誘いを断ったというのに、ふたりとも快い反応で良かった。過度な落胆も強要もなく、自然な態度に力が抜けた。
彼らを避けているつもりはないのだが、喧噪の中で会話と食事を並行して行う一般的な昼休憩は、ヒューガルデンにはやや荷の重いものだった。
仕事終わりならまだしも、休憩とは休むためのものだ。 午後のタスクを遂行するためにも、神経を休ませておきたかった。
いったい彼らはいつ休んでいるのだろうと、ヒューガルデンは疑問に思う。
しかし、いずれ同行してもいいかもしれない。自分の在り方を尊重してくれる今の隊のメンバーなら。
抱えた野菜を一瞥し、ひたすらに森を目指した。
つかず離れず