「今度会うとき、泊まっていかないか?」
そう提案されたときからユメの高揚は始まった。明言されたわけではないが、つまり、そういう行為をするのだろう。
自分でするのも気持ちいいのに、大好きな人に触られたらどうなってしまうのだろう?
ディスポを空想して自分を慰める日が増えた。
そして、下着や避妊具を用意して当日を迎えた。
先日の一件があってか、ディスポは料理を煮込んでいる間に抱きしめたり、映画の鑑賞中に頭を撫でたりとスキンシップが増えた。
距離が縮まった嬉しさといったら。ユメは口元を緩ませて肩にもたれた。
「なかなか面白かったな」
「うん。主人公が負けじと戦うところがよかったね」
「やっぱり悪は正義には勝てないのさ」
「ハッピーエンドだったから後味がいいよね。もし続編が出たら観に行こう?」
そうだな、とディスポは頷いて伸びをした。
「さてと、風呂に入るとするか。ユメちゃんが先でいいぞ」
「ありがとう。じゃあ行ってくるね」
ユメは浴室の戸を閉めた。念入りに体を洗い、湯を浴びる。上を向いて目を閉じた。初めてのことに不安がないわけではないが、ワクワクのほうが大きい。
恋人の新たな表情を見られるのを楽しみにしつつ、パジャマを着た。
「お待たせ」
「早かったな」ディスポは着替えを持って立ち上がり、ユメを眺めた。「風呂上がりのユメちゃんもいいな」
「そんなに褒めないで」
「へへっ、思ったことを述べたまでさ!」
じゃあ、あとでなと脱衣所に消えるディスポを見送って、ベッドに腰かけた。なんとなく枕を嗅いでみれば、かすかにフローラルの香りがする。心地よくなったユメは息を吸っては吐いて横になった。
「待たせたな」
ディスポの声に飛び起きる。少しうとうとしていたようだ。
「眠いか?」
「ううん、大丈夫だよ」
「そうか」
隣に座ったディスポの頬は、ほのかに紅潮している。
「お風呂上がりのディスポくんもいいね」
ふたりは笑い合った。ディスポの手が誘うように頬を撫で、どちらともなく唇を重ねた。初めはついばむように。次第に口内を侵食するように。
それとともに腰に手が回され、やんわりと胸をもまれる。ユメも遠慮なく同じ部位を触り、筋肉の厚みを感じ取る。
こんな触り方をしていいのは自分だけだ、と思うと恍惚とした気分になってくる。
「お尻も触って……」
ユメがねだるとディスポは丸みを確かめるように手を這わせた。押し上げるような圧迫や大きく左右に揺さぶる動きにユメの脳内は熱を増した。
もっと、もっと。
際限なく湧き出てくる欲望に押し出されて服を脱ぐ。お互いに一糸まとわぬ姿になった。
やはり目がいってしまうのは、そそり立つ男根だ。
「素敵だね」
ユメはローションを少量手に取った。
「どうされると気持ちいいのかな? 教えてくれる?」
そっと竿を包み、液体をまとわせる。
「亀頭が一番感じる……かな」
「ここ?」
先端をぷにぷにとつまみ、撫でさする。
ディスポは目を細めて吐息をもらした。感じてくれているのだろうか。さらに喜んでほしくて竿の上下運動を加えてみる。
「ん……くっ……ユメちゃ……」
「気持ちいい?」
「そ、そのへんでいいぞ」
軽く肩に触れられ、手を止める。ディスポが避妊具を取り出すので、
「私が着けてあげるね」
丸まったものを先端に当て、くるくると被せた。
「今度はオレが攻めるぜ」
と、やる気に満ちた声で押し倒すディスポ。
「綺麗だな」
首筋に唇を当てながら胸をもみ、胸の頂を舌で転がしながら下腹部をさする。手と唇が少しずつ下っていく様に胸が高鳴ってしまう。
次いでその手は脚を開かせた。
「恥ずかし……」
顔を背けるユメをよそに、割れ目に中指を滑り込ませる。
「ん? もう準備ができてるみたいだ。エッチだな」
「だって、やっとディスポくんとできると思ったら、嬉しくて……。今日ずっとドキドキしてたんだよ」
「ご期待に添えるよう頑張るぜ」
ディスポは指に蜜を絡ませて花芯を撫でた。思わず声がもれる。しばらく刺激を続けたあと、
「さて、ユメちゃんのいいところはどこかなー……」
挿れた指を少し曲げ、恥骨の裏あたりを探った。優しく擦りつけるように指が動くと、ほんの少し尿意に似たじんわりとした快感が広がる。ユメは深く息をついた。
「ははーん……ここだな?」
「うん、そこ……いい感じ」
ディスポの指が往復するにつれ、快感が静かに高まってくる。
かと思うと、指を挿れたまま花芯を舐め始めた。さらには吸った状態で根元を揺らされ、その強い刺激に息を荒げた。
「やあっ……! 変になっちゃ……っ!」
「いやか? じゃあ、やめちゃおうかなー……」
「いじわる」
「なんだ、欲しいのか? 言ってくれないとわからないぜ?」
「……ディスポくんのおちんちんが欲しい」
「そう言われちゃ仕方ねえ。挿れるぞ?」
硬いものがそろそろと分け入ってくる。
「ん……」
「ユメちゃんの中、あったかいぜ」
ディスポは覆いかぶさるようにしてキスをした。
そうして、ゆっくりと動き始めた。男性器がへそ側の膣壁をこするたび、甘いしびれが走る。
「あ、いい……っ」
少しずつ速度を変えては、「どれくらいの速さがいいかな?」と訊いてくる。
宇宙一のスピードを誇るディスポにとっては高速でのピストンなどわけもないことだろうが、ユメに合わせようとするあたり愛情が深い。
「ゆっくりめがいいかな」
「わかった」
ユメは包まれるような感覚の中で与えられる快感に集中した。
徐々に、先ほどの愛撫で敏感になっていた内側が限界に近づいていく。
「ディス、ポく……! もう……!」
「好きだ、ユメちゃん……!」
「あ、ああっ!」
湧き上がる波に身を任せた。
「んっ……オレも……っ」
ディスポの動きが止まり、お互いの息遣いが部屋に満ちた。
一息ついたふたりは並んで横になった。
頭を撫で、愛してるぜ、と呟くディスポ。
ユメは微笑んで、私も、と応える。
「ユメちゃんって」ディスポが面白そうに言う。「意外と攻めの性質があるよな。オレのを触ってきたとき、ちょっとびっくりしたぜ」
「それは……ディスポくんが可愛いから」
「可愛い? そうか?」
「カッコよくもあるけどね」
「カッコ可愛いってやつか?」
ふたりは声を出して笑った。
「これから、いろいろ試していこうね」
「そうだな!」
キミのペースで